NEWS

【コラム】トレーディングカードゲームと法律学習について

私は、趣味でカードゲームをよくプレイします。
司法試験受験生の中には、司法試験を受けるにあたり、学習の阻害になるという理由で趣味をやめてしまう人がよくいます。
しかし、私にとって、カードゲームは、学習の阻害となるどころか、学習の推進すらしてくれたものでした。
法律の学習とカードゲームというと全く関係のないもののように思えますが、この2つは実はとても類似しているのです。

カードゲームは、大きく分けて、UNOやトランプのような各プレイヤーに共有されたカードを用いてプレイするものと各プレイヤーが事前に一定のルールの範囲内でカードを組み合わせた束(デッキ)を作りプレイするものの2種類に分類できます。
私がよくプレイしているのは、後者のトレーディングカードゲームと呼ばれるものです※1

トレーディングカードゲームは、デッキ内のカードの能力を使用し、定められた勝利条件を達成することを目的として対戦を行うゲームです。そのため、トレーディングカードゲームには、ゲームの進行や勝利条件等を定めた基本ルールが存在します。
ゲームで用いるカードの中には、様々な能力を持ったものが存在し、中には、ゲームの幅を広げるため、基本ルールを改変するような能力を持つものもあります※2
そのため、基本ルールと各カードに記載されている能力の間や各カードに記載されている能力同士の間に、矛盾が生じることがあります※3。このような場合、一定の法則に従って、矛盾が解消されることになります。
しかし、この法則は、基本ルールに規定されているわけではないため、基本ルールのみからではどのように解決すべきかわかりません。

各社がこの問題を解決するためのアプローチとしては、主に、以下の2通りの方法が考えられます。

1つ目は、基本ルールとは、別に詳細な総合ルールを定め、公開するという方法です。
この方法は、総合ルールが各ケースを漏れなく反映されたものであり、かつ各プレイヤーが総合ルールから問題となったケースの処理を適切に参照することができるのであれば、総合ルールのみを参照することで処理をすることができるため、ゲームを円滑に進めやすいというメリットがあります。
他方、総合ルールは、抽象的なものとならざるを得ない上、基本ルールと比べると、膨大な量となるため、習熟したプレイヤーでなければ、適切な参照が困難であるというデメリットがあります。また、カードの能力が記載されたテキストの表現は、販売開始直後から徐々に時間をかけて洗練されたものとなることが多いため、参照に耐えうる総合ルールを作成することは、販売開始から一定の時間が経ったカードゲームでなければ困難であることが多いです。

2つ目は、問い合わせ窓口などで処理に関する問い合わせ等を受け付け、問い合わせが多いものについて、個別の事案の処理方法についての裁定をデータベース等で公表するという方法です。
この方法は、裁定が出るまでは、処理方法を問い合わせる必要があるというデメリットがあるものの、一度裁定が出てしまえば、同様の問題についての裁定は、カード名をデータベース等で検索することで、新たにそのカードゲームをプレイし始めたプレイヤーにとって、わかりやすいというメリットがあります。
他方、問い合わせる必要があるため、問題が発生した時点でゲームを止める必要があることや、問い合わせ窓口の営業時間外であった場合、適切な処理方法がわからないこと、窓口の運営方法によっては、問い合わせの段階で対応者によって回答が異なる場合があることなどがデメリットとなります。
(この2つのアプローチの違いは、個人的に、成文法主義と判例法主義の考え方に通じるところがあるのではないかと考えていますが、この点については、別のコラムで考察することとして、今回は割愛します。)

この方法で問題を解決しようとする場合、プレイヤーは、以下のことが必要です。
まず、状況を整理し、基本ルールや各カードの能力の間で文面上矛盾が生じていることを確認します。
その後、プレイヤー同士(大会やイベントの場合にはジャッジ)がその問題を処理するための裁定を知らない場合、問題が発生したカード名をデータベース等で検索し、類似の問題について、裁定がでていないかどうかを確認します。 そのカードについての裁定が出ていない場合、問い合わせ窓口に問い合わせを行ったり、類似の能力を持ったカードについての裁定を調べたりすることで、問題を処理します。
また、プレイヤーは、この作業を繰り返すことで、ルールの根本にある考え方を理解し、表面的には全く異なる問題であっても、根本が同一の問題であれば、データベース上で裁定が公開されていなかったとしても、処理できるようになります。

ところで、このような、ある事案を処理するにあたり、ルールの文面だけでは一義的に解決できない問題をいかに解決するかを考える作業は、まさに弁護士の仕事です。
法律実務においては、ある事案を解決するにあたり、適用されるルール(法律)を特定し、抽象的に規定されたルールからは一義的に解決できない場合には、裁判所による裁定(裁判例)を確認し、裁定の背後にある考え方を理解して事案を解決することが求められますが、この作業は、前述したカードゲームにおけるプレイヤーの問題解決方法と極めて類似するのです。

私は、これに気がついたとき、震えました。
法律を学ぶ人の中には、このような法律的な思考に馴染めず抵抗を覚える人がよくいます。私は、そのようなタイプではありませんでしたが、特段の抵抗もなく法律を学ぶことができたのも、トレーディングカードのおかげかもしれません。
遊戯王OCGは、私が小学生の頃、同年代であれば、男女問わず知らない者はいないほど爆発的にヒットしました。その頃から時に離れたりしながらも楽しんできたトレーディングカードゲームという趣味がこのような形で活きたことに気がつき、とても嬉しく感じたのを今でも覚えています。

学生時代は、法学部の友人とカードゲームも法律も同じように楽しく、難解な概念が出てきた場合には、それぞれの概念に置き換えて考えてみたりすることで、時間的にも精神的にも効率的に学習を進めていくことができたように思います。
このように趣味は、仕事や勉強の息抜きとして、とても有用であるのみならず、直接的に仕事等に活きてくることがあります。忙しいなどの理由で趣味をやめようかなと考えているときには、その趣味が何かに活きないか考えてみるのも面白いかもしれません。
特に、カードゲームプレイヤーの方には法律の学習、法曹の方にはカードゲーム、オススメです。

(弁護士 宮本祥平)


※1:

私は、主に、株式会社コナミデジタルエンタテインメントから発売されている遊戯王オフィシャルカードゲームデュエルモンスターズ(以下「遊戯王OCG」といいます。)、Wizards of the Coast LLCから発売されているMagic: The Gathering(以下「MTG」といいます。)の2つのタイトルをプレイしています。そのため、このコラムは、この2タイトルを念頭に置いています。

※2:

Ex:相手がある勝利条件を満たしても自身がゲームに敗北しないようにするものなど

※3:

Ex:「A(という種類の)カードを破壊する」という能力と「このカードは破壊されない」という能力

©︎ ATSUMI LAW OFFICE.