不動産退去時に賃貸人が主張した原状回復工事費用について、保証金から控除させなかった事例 | あつみ法律事務所
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不動産退去時に賃貸人が主張した原状回復工事費用について、保証金から控除させなかった事例

  1. ■事案の概要
  2. Xさんは、ある建物をスケルトン状態で事業用に借りて、内装工事を行い、事業運営をしていました。Xさんが建物から退去するときに、原状回復工事を賃貸人が行ったとして、預託していた保証金から、原状回復工事費用を控除すると賃貸人から主張されました。しかし、Xさんが建物内の状況を確認したところ、建物内はスケルトンどころか、ほぼXさんが行った内装のままでした。Xさんは、原状回復工事の費用を保証金から控除することは許されないと主張しました。

  3. ■原状回復工事の意味
  4. 訴訟において、Xさんは、原状回復工事の「原状」とは、建物を借りたときの状態、すなわちスケルトン状態であると主張しました。これに対して、賃貸人は、次の賃借人に貸すために、カーペットの張替えや配線の撤去といった工事を行ったのであるから、これが原状回復工事にあたると主張しました。判決においては、賃貸人が行った工事は、実質的に次の賃借人に便宜を図った工事であり、本来賃貸人が実施するべき原状回復工事の内容が正しく理解されて行われたものではないとして、Xさんの主張が認められ、保証金から原状回復工事の費用を控除することは許されないこととなりました。

  5. ■ポイント
  6. 賃貸借終了時において、賃貸人が行う原状回復工事は、工事を行うのであれば何でも良いのではなく、賃貸借が開始した際の状況に戻すものである必要があります。賃借人サイドからすると、原状回復のための工事ではない工事費用や、過大な原状回復工事費用を請求された場合には本件のように争うことも可能です。
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